自分の軌跡を形に


by kazuyuna
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2005年 08月 11日 ( 1 )

今までありがとう。君といて楽しかったよ。

ありきたりなセリフだけど、僕はそうつぶやいた。
それは小さな声だった。とても、とても小さい声。
だから君には聞こえていないかもしれないね。そう思った。

ううん、ちゃんと聞こえてる。私も……私も楽しかったよ。

君の瞳から流れる涙がそう言っていた。
目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものだ。
君の口は全く動いていないのに、語りかけられているようだよ。

頼むから見つめないでくれないか。
君と別れることを決めていたはずなのに心が揺れてしまうから。
その瞳を見ていると決心が鈍ってしまうから。

僕がそう思った矢先に君の目が逸れた。
君は……君は、そこまで僕の心を理解してくれていたのか。
本当にこの決断は間違っていないと言えるのか?
僕のことをこんなに想ってくれている人と別れるのか?
そんな気持ちがよぎってしまう。

君の優しさが僕を引き止める。君への愛しさが僕を呼び戻す。
目を逸らしていた僕は君の目を見つめ、告げようとした。

やっぱり、もう一度……

だが、君の声が僕の声を遮った。

私は貴方が好きだった。一度決めたら貫く貴方が好きだった。
だから……別れましょう。最後まで私の好きな貴方でいて欲しいから。


……わかった。

僕が返した言葉はこれだけだった。この言葉以外言えなかった。
喋ってしまうと格好悪くなってしまいそうだったから。
君の好きな僕ではなくなってしまいそうだったから。

さようなら。私の愛した人。

彼女は微笑んだ。その笑顔はとても美しく、とても儚く感じられた。
そして、その笑顔が僕の見た最後の君だった。

さようなら。僕の愛した人。

僕は君に背を向けて歩きだした。決して後ろは振り返らずに。
こうして僕は君と別れた。それは夏の午後。とても暑い日だった。








ドラマ『大学近くの散髪屋で』
主演:管理人 ヒロイン:管理人の頭髪

緋村剣心(るろうに剣心)の名言】
 今までありがとう そしてさよなら 拙者は流浪人 また流れるでござる

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by kazuyuna | 2005-08-11 13:04 | 日記