自分の軌跡を形に


by kazuyuna
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昔の小説 第二弾(リネージュⅡ)

というわけで、再び小説をアップします。
リネージュⅡというゲームが舞台となっており、一般の方には分かりづらい
言葉が出てきますので、少々補足しておきます。
ちなみに登場人物は完全オリジナルです(モデル有りの登場人物もいます)

・エルフ
人種の一つ。エルフとは人間(ヒューマン)と近い姿形をした亜人、
自然の化身である。長い耳が特徴。
職種が2つあり、エルブンファイターとエルブンメイジがある。
前者は戦士系、後者は魔法使い系。

・オラクル
エルブンメイジは一定のレベル(強さ)に達すると転職できる。
オラクルとは、エルブンメイジの上級職を指し,回復魔法が大の得意。

・エルフ村
エルフ達が暮らす村。
村の中央には世界樹が茂っており、エルフ達を癒している。

・PT
パーティーの略。仲間と組んだ徒党を指す。
強いモンスターと戦う(狩りをする)ためには必須。

・ヒール
回復魔法。仲間の傷を癒すことが出来る。
レベルによって回復効果が違い、レベルが上がると回復量が多くなる。

・MP
マジックポイントの略。魔法を使うために必要なポイント。
レベルが上がると最大MPが増加する。

・帰還スクロール
使用すると一瞬で最寄の村へテレポートできるアイテム。
割とお手軽に購入できる。


それでは、「読んでみる?」をクリックしてみてくださいな。



【私がオラクルになったのは……】

「大丈夫ですか?」
 
聞こえてきたのは1人の男性の声だった。

その声に気付き,私は閉じていた瞳を再び開き、光を手にした。

手足は震えていた。初めて感じた死の感覚に身体が硬直していた。

しかし,瞳は目の前にいる男性をしっかりと捕らえていた…。


話を少し前に戻すとこういうことだ


今までエルフ村で育ってきた私は仲のよい友達と狩りを楽しんできた。

そして今日も幼馴染とPTを組み,狩りに出かける――はずだった。


始まりは幼馴染の一言だった。

「なぁなぁ、今日はいつもとは違う場所にいってみないか?」

言葉を放ったのはいつも狩りを楽しんでいるPTの中でも
リーダーの役割を果たしているライジだ。

エルブンファイターである彼は体格に優れ,多くの武器を使いこなし,
仲間からも信頼されていた。

――ただ一点「一言多い」という欠点はあるのだが…

「いつもと違う場所ってどこです?」
 
控えめな声で質問したのは,エルブンメイジのメルファである。

ヒールを使いこなし,狩りでは常に後衛に位置する彼女はPTでの回復役。

無茶をよくするライジがモンスターにやられないのも彼女の存在が大きかった。

メルファの質問が言い終わるかどうかのうちに私の口は動いていた。

「いいね~。そろそろつよ~い敵と戦ってみたかったんだよね!」

私は昨日レベルが上がったばかりだったので,一刻も早く力を
試してみたくてうずうずしていた。

「そうだなぁ,とにかく強い敵がいるところがいいな!
俺のこの剣でバッタバッタとなぎ倒してやるぜ」

「じゃあ,私は得意の魔法で敵をやっつけちゃうよ~。負けないんだから!」

私の発言が終わる前にライジが口を開く。

「…なぁ、シラー。お前、ヒール覚えないのか?」

エルブンメイジである私は本来得意としているはずのヒールを習得していない。

回復するよりも敵を先に先に倒してしまえばいい。

そちらの方が私には合っている。

そう考えているからだ。

「またその話~?何回も言ってるでしょ。回復よりも攻撃あるのみ、だよ!  
それに回復ならメルファがいるじゃない?1人いれば十分だよ」 

ライジははっきりとした口調で私に反論してきた。

「ああ,今まではな。だけどこれからはそうはいかないかもしれないだろ?  
回復役がたくさんいるにこしたことはないじゃないか?」

「あ~ そんなこと言って自分だけでオイシイところ全部持っていっちゃう
つもりでしょ?そうはいかないんだからね」

笑顔を交え,私はライジに言葉を返した。

ライジも私も気が強い。口喧嘩になるときもしばしばだ。

でも,どちらかが譲りあうことですぐに収まってきた。

しかし,今日のライジは私の笑顔にも真剣な顔でさらに会話を続けてきた。

「大事なのは敵を倒すことじゃないだろ?
PT全員がしっかりと生きてここに帰ってくることだ。
そのためには1人でも多くの回復役がいた方がいいじゃないか」

「……そんなこと,言わなくても分かってるよ」

「じゃあ,ヒール覚えるんだな?」

「それとこれとは話は別。
ヒール使わなくてもいいぐらい強い魔法覚えるんだから平気だよ」

「全然わかってないじゃないか…」

だんだんと険悪な雰囲気になってきた。

いつも口喧嘩をしているとはいっても
今日は今までにはないような雰囲気である。

それにいち早く気付いたメルファが口を開く。

「あ、あの。ヒールなら私が使えますし。ヒールを強化していくつもりです。
だから回復なら私に任せてください…」

勇気を出して2人の中に割ってはいったものの,
最後は消え入りそうな声であった。

天の助け!と思った私はメルファの言葉にすぐさま食いついた。

「ね、ね。メルファもそう思うよね~。さっすがメルファは話が分かる~」

「メルファ…お前もわかっているはずだろ?
最近の狩りの最中,いつもMPに苦労しているじゃないか。
もう一人ヒール使えたらいいなってそう思ってるはずだぜ」

「…そう、なの?メルファ?」

メルファは答えない。

しかし,その目を見ればライジの言った通りなんだと分かってしまった…。

「おいおい,今まで気付いてなかったのかよ。
全く仲間のことぐらいよく見ておけよな~。  
言わなきゃ気付かないなんて。苦労するぜ、全く…」

「何ですって?」

ライジは しまった,言い過ぎたな と思ったのだが,すでに後の祭りであった。

普段私はなるべく周りに合わせるようにしている。

その分一度火がついたらなかなか収まらない。

「じゃあ,もう1人メイジをPTに加えたらいいじゃない?
ヒールの得意な人,見つかるといいわね!」

私は強い口調で言葉を発すると同時に走り出していた。

そして,あっという間にエルフ村を飛び出してしまった。 


どのくらい走ったのだろう…。

私は息を切らし,それでも追いつかれないように走り続けた。

しばらく全力で走り,流石に限界と感じ一本の木にもたれかかった。

身体は疲れていた。が,頭の中は先ほど起こった出来事でいっぱいだった。

私が怒っているのはライジの口調にではない。
(もちろん,それも原因の1つではあるのだが)

自分の仲間であるメルファが狩り中に困っていた。

そのことに気付けなかった自分に腹を立てているのだ。

また,ライジの言ったことも当たっている。

当たっているからこそ,反論できない自分が悔しかったのである。

「あ~あ。つまんないなぁ…」

気付けば,全く知らない場所まで来ていた。

辺りも暗くなり始め,周りも見えづらくなってきている。

「どっち行ったら,エルフ村帰れるのかなぁ…」

と,小さな声を発した時に何か音がした…

ガサ,ガサ…

「な,なに? 怖くなんかないんだからね…」

私は戦闘態勢にはなっているものの,手足は恐怖で震え,
とても動けるとは思えなかった。

と,その物音の方から人影らしきものが出てきた。

「な、な~んだ。人だったのね。心配して損しちゃった~」

心から安心した私はその人にエルフ村への帰り方を聞こうと近づいていった。

「すいませ~ん。エルフ村って…  ??」

質問を言い終わる前に異変に気付いた。

その人…だと思っていたものは人ではなかった。

その人影は…

(長老に聞いたことがあるわ…。
エルフを支えてくれている世界樹が汚染されている。
確か,川の水源を荒らしているモンスターがいるって。こ、こいつが…?)

水源を荒らしているモンスター プレイグゾンビ だった。

ギギ,ギギ

言葉にならぬ声でゾンビが何か喋っている。

あっという間にゾンビの身体が赤く光りはじめた。

攻撃魔法に詳しい私はすぐに気がついた。

「あ、あれは炎の魔法だわ!
それも私が使っているものよりも高レベルのもの…  
悔しいけれど,ここは逃げるしかないわね…」

すぐに振り向き,私は走り出した。幸いゾンビの足は速くはない。

十分に逃げることのできる距離であると思われた。

しかし,魔法の範囲より遠くに行く前にゾンビが放った魔法が私を捕らえた。

「きゃあぁ…」

炎は全身を包み,消えることのないような勢いで燃え盛っている。

「ハァ…ハァ」

私は必死に近くの川へと走った。

川の水を使い,炎を消し止めた時にはすでに体力のほとんどを奪われていた。

ギギ,ギギ

ゾンビの全身が紅く輝いている。先ほど見たものと同じ光景。

それは想像したくない光景であった…。

「う,嘘…でしょ。もうだめ…」

私は死を覚悟した。自分にはどうすることもできない…。

ただ自分の無力さが悔しかった。

目をつむり,炎を見ないようにした…。

目をつむることだけが今自分のできる唯一のことだった。

そして,自分に訪れる最後の瞬間を静かに待っていた…。


私が目をつむってからどのくらいの時が流れたのだろう。

おそらくは1,2分だったに違いない。

しかし,私には何時間にも感じられるほと長い長い時間だった。

「大丈夫ですか?」

聞こえてきたのは1人の男性の声だった。

その声に気付き,私は閉じていた瞳を再び開き、光を手にした。

手足は震えていた。初めて感じた死の感覚が身体を硬直させていた。

しかし,瞳は目の前にいる男性をしっかりと捕らえていた…。

「良かった。無事みたいですね」

私の安否を確認するとその男性はうっすらと笑顔を浮かべた。

(エルフ…じゃない。似ているけど違う人種みたいね。
もしかしてヒューマンと呼ばれている人種かしら…)

いろいろな考えが浮かんできた。

私は普段は思ったことはすぐ口に出すようにしている。

だが,今は先ほど味わった恐怖のために声を出すことができなかった…。

「エルフの方みたいですね。どうぞ,これをお使いください」

そういうと,その男性は私に帰還スクロールを手渡した。

「村に帰ってゆっくりお休みください。早く怪我が治るといいですね。それでは」

その男性が後ろを向いた。

(このまま何も言わず,さよならなんてしたくない。そんなの絶対にいや!)

その想いが神に通じたのであろうか?

私はたった一言だけ,
でもどうしても聞いてみたかった言葉を喋ることができた。

「どうして,あなたは見ず知らずの私を助けてくれたの?」

ありがとう,という言葉を言えばよかったのかもしれない。

でも,私はどうしてもこの質問がしたかったのだ。

向こうを向いていた男性はこちらを振り向き,一呼吸あけてこう答えた。

「君が困っていたからね」

満面の笑顔でそう答えた男性はすぐにその場を去っていってしまった。

その答えを聞いたとき,私は初めはきょとんとしていたが,

フフ 

いつのまにか笑っていた。

「困っていたから,助ける,か。
そうだよね。助ける理由なんてそれだけでいいよね~」

今の男性の言葉で私の心のなかのもやもやがきれいに晴れた。

と同時に私はこう叫んでいた。

「決めた!私,オラクルになるわ。いっぱいいっぱい人助けしちゃうんだから!」

偶然の出会いが私の運命を決めてしまった。

ううん,偶然なんかじゃないわ,きっと。また,あの人に会える気がする。

その時までに立派なオラクルになって,今日のお返ししてあげるんだから!


こうして,私は転職でオラクルになることを決心した。

エルフ村での「私,オラクルになる!」発言は
理由を知らないライジを戸惑わすことになるのだが

それはまた先のお話…

―― Fin ――
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by kazuyuna | 2006-04-27 23:31 | 小説